はじめに
「この度、あなたは救済金支援対象者の審査に通ったので〇〇万円お渡しします」「政府直轄の団体からあなたに支援金です」——SNSやLINE、メールでこうした話を持ちかけられたことはありませんか?
困っている人ほど、こうした「もらえる話」に救いを求め、心を動かされやすい傾向があります。
しかし実際には、この手の話のほとんどが個人情報や金銭を狙う詐欺であることは言うまでもありません。ここでは実際の事例をもとに、なぜ信じてはいけないのか、そして万が一のときにどう動くべきかを整理して予防の一助になればと思います。
「給付金・支援金で○○万円受け取れる」という話、なぜ信じてはいけないのか
実際にあった給付金・支援金詐欺
2026年7月には、「生活困窮者支援機構」を名乗る団体が、SNSやメールから不審なLINEグループへ利用者を誘導し、「政府直轄の給付金」と称して金銭を要求する事案が確認されました。この団体は、実在する支援団体の連絡先や所在地を無断で自らのものとして表示していたと言われています。
確認されている詐欺の手口
・ 「生活困窮者支援機構」という架空の組織名を名乗る。
・弊団体の名称、電話番号、メールアドレス、住所などを無断で使用し、信頼させようとする。
・「政府直轄給付証明証」などと称するテキスト(受給金額5億円、認定番号等が記載。)を送りつけ、多額の現金が受け取れると信じ込ませようとする。
・LINEグループへの参加を促し、支援金の名目で振込やギフトカードの番号を要求したり、個人情報を聞き出そうとする。皆様へのお願い
・弊団体が、LINEグループを通じて一方的に金銭の振り込みを求めたり、給付を勧誘したりすることは一切ございません。生活困窮者自立支援全国ネットワーク「生活困窮者支援機構を名乗るLINEグループ勧誘への注意」(2026/7/6)
https://life-poor-support-japan.net/2026/07/06/line/
同じく2026年7月、福岡市博多区では「審査の結果、〇〇万円の生活支援金が受け取れる」という電話をきっかけに、暗証番号を聞き出したうえでキャッシュカードを郵送させる詐欺が連続して発生しました。
犯行グループは「審査の結果、〇〇〇万円の補助金の受け取りが可能だ」「手数料を引いた〇〇〇万円が受け取れる」などと持ちかけ、言葉巧みに暗証番号を聞き出した上で、銀行のキャッシュカードを郵送させてだまし取る手口を繰り返している。
西日本新聞「福岡市博多区で生活支援金の交付をかたる詐欺が連続発生」(2026/7/17)
https://www.nishinippon.co.jp/item/1516755/
さらに2026年6月には、補助金申請支援を行う企業を騙り、SNSのダイレクトメッセージで口座情報の確認や手数料の振込を求める偽アカウント・偽メッセージが確認されています。過去には新型コロナ関連の特別定額給付金を装い、公的機関の職員を名乗って通帳やキャッシュカードを預かろうとする手口も繰り返し報告されてきました。
最近、SNS(X・Instagram・Facebook・LINE 等)において、
株式会社補助金ポータルや当社担当者を名乗り、
口座情報の確認や支払いの依頼を行う不審なDM・メッセージが確認されています。これらは“振り込め詐欺”や“個人情報の詐取”を目的とした悪質な手口です。
十分にご注意ください。補助金ポータル「株式会社補助金ポータルを装う詐欺にご注意ください」(2026/6/11)
https://hojyokin-portal.jp/news/208
なぜ「もらえる話」を信じてしまうのか
こうした詐欺には共通する心理的な仕掛けがあります。
- 緊急性を煽る:「今だけ」「審査に通ったのは今回限り」など、考える時間を与えない
- 権威を装う:公的機関や実在する企業・団体の名称、著名人の名前を勝手に使う
- 閉じた環境に誘導する:LINEグループなど外部の目が届きにくい場所でやり取りさせたり、他言無用を約束させ、第三者に相談させにくくする
- 希少性を強調する:「あなただけ」「特別枠」といった言葉で冷静な判断力を鈍らせる
物価高や生活苦を背景に「困っている人を助ける」という体裁を取ることで、警戒心が薄れやすいことも狙われる理由のひとつです。
近年はAI技術を悪用し、本物そっくりの画像や音声、公式サイトに似せた偽サイトを短時間で作れるようになったことで、見た目だけで真偽を判断するのがより難しくなってきています。
SNSなどの実際に会ったことのない相手と長期間にわたってやり取りを重ね、信頼関係を築いたうえで一気に金銭を要求する手口も増えており、給付金の話が投資話やロマンス詐欺と組み合わされるケースも報告されています。
公的機関が「絶対にしないこと」
国や自治体、金融機関などの公的機関が、給付金・支援金の手続きに関して絶対に行わない事を知っておけば、このような被害に遭う事を未然に防ぐことができます。
- 電話・SMS・SNSなどの通信でお知らせをしてくる
- 支援金受け取りの為と称して口座番号や暗証番号、マイナンバーを聞き出す
- ATMの操作を電話やメール、SMSなどの遠隔で案内する
- 受給のために手数料の振込を求める
- LINEグループなど個別のクローズドな場への勧誘や、公式サイト以外への誘導
- 個人名義の口座、あるいは頻繁に変わる振込先を指定する
特に日本の行政手続きでは、給付金や支援金に関する通知は、住民票(住民基本台帳)に登録されている住所宛てに、書面(郵送)で送られてくるのが基本です。実際に過去の給付金でも、住民登録されている世帯主宛てに申請書が郵送で届く方式が取られています。
電話やSNS、LINEなどで書面より先に個人情報や振込の話をしてきた場合は、その時点で詐欺を強く疑ってください。
法的にはどう位置づけられるのか
一般に知られている枠組みを整理すると、人を欺いて金銭を交付させる行為は刑法上の詐欺罪(刑法246条)に該当し得ます。また、実在する公的機関や企業・団体の名称を無断で使用する行為も、別途の法的問題を招く可能性があります。
一方で、いったん振り込んでしまった金銭の回収は簡単ではありません。犯人の特定や返還請求には支払い方法によって時間がかかるケースが多いのが実情です。
「知らなかった」「善意で応じた」という事情があっても、被害の回復が全額保証されるわけではないことに注意しましょう。
また、支払い方法や被害から相談までの期間によっても具体的な対応は異なってまいります。詳しくは、弁護士事務所や法律事務所に相談をおすすめいたします。
怪しいと感じたときのチェックリスト
- 連絡してきたのが公式の機関・企業か、公式サイトや公表されている代表番号からか
- 「今すぐ」「あなただけ」といった急かしたり特別感を煽る言葉が使われていないか
- 個人名義の口座への振込や、手数料の前払いを求められていないか
- LINEグループなど外部の場所への登録を持ちかけられていないか
- 家族や第三者に相談せず、自分ひとりで判断しようとしていないか
一つでも当てはまるなら危ないと判断して、まずは周囲の信頼できる人や警察に相談しましょう。
大事なお金のことですから、その場で判断せず、いったん距離を置くことが最も有効な自衛策になります。
家族や周囲のためにできること
給付金・支援金詐欺は、ご本人が「自分は騙されない」「私は大丈夫」と思っていても被害に遭うことが少なくありません。寧ろ、そう言った方こそ被害に中々気付けなかったりすることはよくあります。
家族や周囲の人は、次のような声かけを日頃から意識しておくと良いでしょう。
- 「役所や銀行が電話やSNSでお金の話をしてくることはない」という前提を共有しておく
- 急にお金の話や知らないアプリ・LINEグループの話が出てきたら、まず状況を聞く
- 一人で振込や個人情報の入力をしないよう、判断に迷ったら一緒に確認する習慣をつくる
特に一人暮らしのご家族がいらっしゃる場合は、詐欺被害のニュースを話題にする機会を定期的に持つこと自体が、有効な予防策になりえます。
まとめ
「給付金・支援金がもらえる」という話は、困っている人の心理につけ込む典型的な詐欺の入り口になっている。公的機関が個人情報や手数料を電話・SNSで求めることはない、という原則を知っておくだけでも、多くの被害は防げる。少しでも違和感を覚えたら、その場で応じず、公式の窓口や家族に確認する習慣を持ちたい。